不良だらけの危険なバイトッ☆

「ずっと…勇気がなくてさ」


そう言ってユキはまるで自嘲するような笑みを浮かべた。


「ここへ来たら、加奈子が死んだこと…認めてしまうみたいで嫌だった」


「うん」


ユキは今でも一人で苦しんでる。


そんな簡単なことじゃないよね。


一気に落ち込んだ顔を見せたあたしを見て、ユキは苦笑いする。


「また暗い顔して…いいから、見てみろよ」


ユキは崖の柵に手をかけて、反対の手をあたしの肩に回した。


ユキの視線の方向に広がる景色。


ユキの生まれ育った町が一望できる。


その向こうに海と空が交じる水平線。


心が洗われるような、切なくなるような…。


「綺麗な町だね……」


答えると同時にこらえきれなくなった涙が溢れた。


いつの間にかユキはあたしを抱きしめ、肩口に頭を預けている。


首にかかる吐息が少しだけくすぐったい。

< 342 / 527 >

この作品をシェア

pagetop