純血のヴァンパイア
雪兎が目覚めてから一週間。

記憶は未だに戻っていない。


記憶を失くしたとはいえ

同胞に存在を知られた以上、また危険な目にあうかもしれない。

だから、蓮と燐には雪兎の傍に居るように命じて

私は、会いに行かなくなった。


記憶をなくした事は、辛くないと言えば嘘になる。

心の中の何かが抜け落ちてしまったような、物足りなさを感じていた。

けれど、これ以上雪兎をヴァンパイアの世界に巻き込みたくなかった。

私と一緒に居れば、必ずまた襲われる。

もうあんな姿の雪兎をみたくない。

残りわずかな人生を、笑顔で生きて欲しい。



コレで良かったんだ。

雪兎にとっても、私にとっても―――きっと。

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