純血のヴァンパイア
満月の夜。

私は蓮と2人で、夜の街を見回っていた。

燐は雪兎の病室にいる。


今夜は夜会が開かれる日。

だからこそ、いつにも増して警戒を怠れない。

あいつらが雪兎に接触してくるかもしれない。



不意にいつか見た桜の木を見つけた。

木の傍に降り立ち、そっと幹をなでる。

あの時は綺麗な花が咲いていたのに、今は緑色の葉が生い茂っている。


あ――――ここから、雪兎の病室が見えるんだ。

雪兎は元気だろうか。発作がおきて苦しんでいないだろうか。

無意識に、病室の方に一歩足を踏み出していた。

―――――――だめ。行っちゃダメだ。
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