純血のヴァンパイア
空には、満月と空いっぱいの星


春になったとはいえ、真夜中はさすがに冷える。

けれど、その冷たい夜風が今の私には心地いい。


ん?なんかいい匂いがする。花の香り?

『優、どうかしたの??』

急に立ち止り、あたりを見回していたから不思議に思ったのか

追いついた銀色の狼が私を見上げ首を傾げている。


「ん。この香り…」

『あー、桜だな。』

もう一匹の、漆黒の毛並みをした狼が反対側から近寄ってきて

漂う仄かな香りをクンクン嗅ぎながらいった。


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