ペンネームはKとM
今でも思い出せない。
いつ、どのタイミングでマサ君がそう言ったのか。
あまりに自然すぎて、驚くのすら躊躇われ、ただ私は頷いていた。
「ごめん。明日、出てくよ」
「うん」
「このままじゃダメなんだ」
「うん」
「ごめん」
「ううん」
首を振った。
隣同士でソファに座り、ドラマを観る。
このソファ、ゴミ置き場から拾ってきたんだっけ。
お金がなくって、二人で運んだんだ。
小説なんてお金にはならなかった。
私は花屋で、マサ君はバイトを二つも掛け持ちして、残った時間で私はストーリーを考えて、マサ君が絵を描く。
慎ましいけれど、楽しかった。
少なくても私はそう思っていたし、マサ君もそう思っていたはず。
K&M。
小松&マサ。
もう、二人で書く(描く)ことはないんだね…。