帰らない二人―彼の鍵―
「あー・・・・」
「?」
急に何か考えるように目を閉じて北中さんが言葉を濁した。
「―――酔ってるな、うん。酔ってる」
「はい?」
『酔ってる』と認める北中さんがどうも腑に落ちなくて私は小首を傾げて聞き返す。
すると、今度は私の目の前に北中さんが手を持ってきた。
目の前の手に焦点を合わせると、今にも落ちる陽に照らされた銀色に光る鍵が見えた。
「え?これ・・もしかして屋上の鍵ですか?なんでそんなもの持ってるんですか?」
だからこんなに簡単にここに入れたのかな。
ホント、単純にそう思って私は言った。