帰らない二人―彼の鍵―
「――――バカか」
返ってきた言葉はいつものような小馬鹿にしたようなセリフ。
「な―――っ・・・」
その言葉に言い返そうとして顔を見たら、少し照れているような、すごく優しい笑顔を向けられていて私は言葉を失った。
「んなもん持ってる訳ねぇだろ」
「え・・じゃ、じゃあ―――これは・・・」
私の手のひらに預けられたいつも放り投げられるキーとは違う鍵。
「・・・お前が介抱してくれんじゃねぇの?―――俺の家で」
・・・確かに聞こえた。
今、“俺の家”って――――――…
その瞬間にその鍵に込められた想いがわかった。
けど―――
「・・・イヤです。私はまだ帰りませんから」
「―――っ」
「北中さんが、ハッキリ気持ちを言ってくれるまでは」
ホントはすぐにでもその腕の中に飛び込んで行きたいくらい。
だけど、ほんの少しくらい私にも意地悪をさせて。いつも放り投げられるキーの仕返し。
「あー・・・その・・・・・・」
でも、この鍵は手渡しだったから、そろそろ許してあげようかな。
*おわり*