帰らない二人―彼の鍵―

いつしか“先輩”としてではなく“男の人”として好意を抱いていた。


でもその関係と距離は変わることはなくて。


そうこうしてる間に今年ももう終わる。






「佐々さん、何がいい?」


ぼーっとしてた私に話しかけてきたのは北中さんの同期の横井さん。


「あ、すみません!私はお茶でいいです」
「え?飲まないの?」
「はぁ・・・まぁ・・・」


ほんのりと顔を赤くして私に声を掛けてきた横井さんは北中さんとは違って人にも物にも丁寧に扱ってくれる、気がきく優しい物腰の柔らかい男性。


今も一歩社員の輪から離れたところでぼーっとしていた私に気が付いて気にしてくれたのだと思う。


「去年も飲んでなかったんだっけ?」


横井さんは私にそう聞いた。

というのは、今日の行事は毎年のことらしい。
私はまだ入社して2年目だから2回目の参加という訳で。

年末の仕事納めの日にはこうして会社でプチ忘年会をするのが恒例で、その代わり新年会は盛大に外で行う。


今日はその仕事納めの日。


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