帰らない二人―彼の鍵―
「北中ぁ~お前、よくやった!!」
「ありがとうございます・・・って店長、飲み過ぎです」
ひと際大きい酔った店長の言葉に私は顔を向けた。
・・・本当は声の大きさで振り向いたんじゃなくて、“北中”という名前に反応してしまったのだけど。
「この12月に、あれだけの成績を残してくれたらもう何も言うことはない!おかげで店舗の順位も上位だった!」
「僕だけの頑張りじゃないですよ」
上機嫌な店長にお酒を注がれている北中さんは至って冷静な返しをしてる。
でも、心なしかやっぱりどこか嬉しそうだし、顔も赤いからお酒が進んでるのかも・・・。
「北中さぁ~ん!本当凄いです!営業出来る人、尊敬しちゃいます!」
甘ったるい声で北中さん横から顔を覗き込むようにして朝野さんが笑い掛けた。
朝野さん・・・北中さんのこときっと、好き、なんだよなぁ。
そう思っていたのは普段からだけど、仕事がオフのようなこの場でそういう場面を目の当たりにすると、やっぱり内心面白くはなくて。
気付けば私は食い入るように、楽しそうに談笑しながらお酒を飲んでいる二人を見ていて慌てて目を逸らした。