【完】白のあなたに恋をする
【白side】
唯は座り込んで、さっきの狂った姿が嘘のように収まって、
今では涙を流している。
その姿で多少は同情したが、
大方、俺の心にあるのは、
怒りだった。
ふざけんなよ、
いい加減にしろ。
近づくな、そういったお前が
今、俺に近づいて
こんな状況にさせた唯に
そう罵ってやりたかった。
けど、それは俺のかわりに杏が全部俺の言いたいことを言ってしまった。
…いや、言ってくれた。
こんなに息が上がるまで、
こんな俺のために、
涙を流してまで…。
こんな時だけど、でも杏が愛おしくてたまらない。
だから…だから、
俺は言う。
ここで終わらせる…。
唯…、お前から逃げずに言うよ…。
俺はゆっくりと、杏から身を離し、
座り込んで震えている唯に近づいた。
正直、杏の体を離したくなかった…。
杏を離して、
今、俺が近づきたくない唯に近づくなんて…。
俺は、嫌だけど、できるだけ近くに唯のそばまで歩き、
そっと唯を見下ろした。