焼け木杭に火はつくか？
「ホントにね。受験勉強のときはあんなに頑張れた子なのに。受験が終わったとたん、国語の教科書は睡眠薬っていう子に戻っちゃうんだもの。どうにかならない、あれ？」

夏海のその言葉に、良太郎は笑い続けながら、もう、どうにもならないですよと言う良太郎に、それもそうねと頷きながら、夏海は原稿を読み始めた。

「サトルくん。なんか作れます？」

やや空腹を覚えた良太郎は、カウンターの中で明日の仕込みを始めた聡に、そう尋ねた。

「腹減ってんのか？」
「ぺこぺこってわけじゃないんだけど。夕飯が微妙な時間だったから、なんか、小腹が空いてるみたいな感じでさ」

軽くでいいんですけど、何か食べたいなあと。
期待を込めてそう告げると、聡は瞬き数回分考えて、口を開いた。

「サラダとか、オムレツとか、そんな感じでいいか？」
「十分です。お願いします」
「酒は？」
「梅酒のソーダ割りください」
「おう。ちょい待ってろ」

良太郎の注文に、カウンターの中で忙しなく動き始めた聡をぼんやりと眺めていると、なんとなく自分に向けられている視線を感じ、良太郎は良太郎の指定席に座っている右側の男に目を向けた。
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