焼け木杭に火はつくか?
ちらりちらりと、こちらを見ている男とばちりと目が合った。
男はすぐに気まずそうに目を反らしたが、良太郎はなんだろうと気になった。


少し年上かな。
夏海さんと近いくらいかな。


あまり人を寄せ付けないような、少しだけ、怖そうな雰囲気を身に纏った男だなと、良太郎は思った。
人相が悪いというわけではない。
人相なら、むしろ良すぎるくらいだ。
大勢の中にあっても、毅然として大勢に飲み込まれずに一人でいることができる、そんな雰囲気がある男だった。


サトルくんとはタイプの違う。
正統派の一匹狼って感じだな。


仕事帰りの会社員というには、Tシャツにジーンズという、ラフな格好をしている。
みにまとうその気配は、やや聡に似ているように感じた。
店の前に止まっていた車がないところを見ると、この団地に住んでいるのだろうが、見覚えがないということは、古くからいる住人ではない。
正確に言えば、どこかで会ったことがあるような気もしているのだが思い出せないという感じだった。
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