焼け木杭に火はつくか?
長谷の存在になど全く興味がないかのように、夏海はそっぽを向いていた。
その様子に、良太郎は腕を組んだ。
長谷は、英吾が取材に行った店のオーナーだ。
夏海も、間違いなくそれは知っているはずだ。
いつもの夏海ならば、長谷に店のことやベーグルのことを、アレコレとここで尋ねるだろう。
けれど、今夜の夏海は長谷のことを見ようとすらしなかった。
聡の言葉に、ちらりと出された皿を見て、夏海は盛大にため息をつき、忌々しそうに聡を見た。
今夜の夏海の不機嫌の原因は、聡と長谷にあるらしいということは、良太郎にもいい加減察しがついた。


この人たち。
なにしたんだ?


そんなことを考えながら、今度は聡を窺い見ると、それに気付いた聡が、小さく肩を竦めてみせた。

「どんな話書いたんよ、おメー」
「え? ああ、これ?」

聡の問いかけに原稿のことかと確認し、良太郎はどうしたものかと夏海を見た。
話してよいものかどうか、判断しかねたからだ。
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