焼け木杭に火はつくか?
「ええとですね、おおよそ、合っていることにします。納得できないけど、いいです。納得します。はい。でもですね、俺の書いた話、そんなオチじゃなかったはずです。そこだけは否定しますよ、俺。復讐なんてないです」

断固としてそこは否定しますよと言う良太郎を見ながら、聡はけらけら笑った。

「そうだよな。ハッピーエンドの神様、良太郎先生だもんな」
「はあ? 何を言ってんだよ。サトルくんも」
「いいじゃんよ。ハッピーエンド。みんな幸せって。おメーは、子どもの頃から、そういうの得意だったろが」

聡の言葉に、なんのことだとポカンと口を開け、どこからツッコムべきか考え始めた良太郎をよそに、夏海が堰を切ったように喋り始めた。

「だって、この女。このあと絶対に、パン屋の男より幸せになってやるつもりでしょ。結婚したら間違いなく、意気揚々と鼻高々に自分の幸せな姿、パン屋の男にこれでもかーって見せつけに行くわよ。この女にとっちゃそれが復讐よ。ほらほら見てよ。私はこんなに幸せなのよ、おほほほほーって笑うことがね」
「そんな結末まで含ませている話なのか? これ」

夏海が刺々しくつらつらと語り聞かせた良太郎の小説の粗筋と、夏海の手によって生み出された結末に、良太郎は頭を抱えるようにして項垂れた。
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