焼け木杭に火はつくか?
「オイラのとこは、父ちゃん、母ちゃん、どっちも親としては規格外の人間らしいからな。そんなん見て育ったから、どーもよく判らねーんだよな」
「何が、でしょ?」

良太郎の質問になど、全く答える気もない様子で喋り始めた聡に、良太郎はため息を零しつつ、その話に耳を貸した。こういうときの聡は、好きに喋らせるしかなかった。

「男を支えるのは女の務めみたいな感覚。夏海さんの説明だとよ、その話のパン屋の男も、そういう感覚で俺に付いて来いって言ったんだろ?」
「いや、ついて来いって言ったわけじゃ。つーか。そのあたりはぼやっとしか書いてないんですけどね、俺は」
「じゃ、あれか。おメーと同じで、言葉の順番と使い方を間違えて、誤解させて、どっかーんて怒らせたってパターンか」
「サトルくん、あんたね」

言いたい放題の聡に、良太郎はわざとらしいほどのため息をこぼす。
そんな良太郎など構うことなく、聡はむくれた顔のままだんまりを決め込んでいる夏海に声をかけた。
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