焼け木杭に火はつくか?
「違う、違うんです。そういうつもりで言ったんじゃないんですよ、俺は。言葉が足りなかったのは認めます。言い方が悪かったのも認めます。それは、全部認めます。酒呑んで気が大きくなっていたのを差し引いても、もう少し、ちゃんと言うべきでした。言葉のチョイスには慎重になるべきでした。はい。俺に非があったことは全面的に認めます。でも、彼女の仕事をないがしろにしたつもりはないし、ましてや、俺のために仕事を辞めて協力しろなんて言ったつもりは、全然、なかったんです、俺は」
「でも、彼女にはそう聞こえちまったんだから、しゃーないわな」

背を向けたままの聡は、背後から聞こえてくる良太郎の必死の釈明を、けらけらと笑いながら混ぜっ返した。

「だからってさ。少しくらいは弁明の余地くれたっていいじゃん。全然、聞いてもくれねえって、どうよ? どう思うよ、サトルくん」

駄々を捏ねるようにジタバタと脚をばたつかせる良太郎を、しかし、聡は鼻で笑うだけだった。
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