焼け木杭に火はつくか?
「さーな。大体、オイラは人の色恋なんかにゃ、そんな興味もねーし」
「はいはい。そうですね。あんたはそういう人でした」

聞いた俺がバカでした。
聡の言葉に、頬をこれでもかと膨らませた良太郎は、自棄を起こしたように、今度は夏海に絡みだす。

「夏海さんは? 夏海さんは、どう思います? 言い訳も許されませんか、俺?」

夏海と向かい合いそう訴える良太郎に、珍しく夏海は言い淀み、目を泳がせる。
一瞬だけ、夏海のその目は長谷を捕らえたが、長谷は気配を殺そうとしているかのように、ただ静かに目を伏せていた。
夏海はそんな長谷からすぐに目を反らし、良太郎を見た。

「なんて言ったのよ、あんた」

やや怒気を孕んだ息を吐き出しながら、夏海は良太郎をそう問いただした。

「だから……、仕事を辞めて一緒にこっちにこないか的なことを、ちょろちょろっとですね」
「正確に言ってみなさいよ。絶対、そんな言い方じゃなかったでしょ」
「それは、勘弁してください。反省してますから、俺」

夏海の容赦ない尋問に、良太郎は頭を抱えて呻いた。
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