焼け木杭に火はつくか?
酔った勢いで言ったあの言葉を、今ここで正確に夏海に伝えようものなら、想像を絶する凄まじい罵声の雷をどかんと落されるのは目に見えている。
良太郎は、頭を抱えるようにしてカウンターに突っ伏して、夏海に全面降伏を告げるしかなかった。

「夏海さん。こいつ、英吾にまでおバカ呼ばわりされて、これでもかってくらい、反省させられたから」

黒ビールをグラスに注ぎ始めた聡は、笑いを含んだ声で夏海にそう告げた。


誰のせいで。
こんな目にあってるんだよ。
俺は。


他人事と決め込んで笑っている聡に、良太郎は心の中で恨み言を吐いた。
その良太郎の耳に、聡の笑い声とは違うくすりと言う笑いが聞こえ、良太郎はその声の主に視線を投げた。
今までのやりとりを、静観を決め込んだように見聞きしていた長谷が、また笑いを噛み殺していた。
良太郎の視線に気づいた長谷は、小さく肩をすくめて口を開いた。
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