焼け木杭に火はつくか?
「誰かの差し金って、なんのことだろうって思ったけど。こういうことか」

どこか自嘲めいた響きを持った声でそういうと、長谷は聡を見た。

「小野さんって、実は、結構強かな策士だね」

長谷の言葉に、聡は眉間に皺を寄せる。

「オイラ、詩なんて書きませんよ?」
「サトルくん。違うって。策略練る人っていう意味だって」
「判ってるよ。ボケただけじゃ」

あんたは普段からすっ惚けてるから、ボケても伝わり辛いんだってば。
ため息とともにそう言う良太郎にうるせえなと言い返しながら、聡はカウンターの中の片隅に置いてある背もたれのない椅子に腰を降ろした。
黒ビールを半分ほど注ぎ入れたビールグラスに、オレンジジュースを注ぎいれながら、やや砕けた口調で喋り始めた。
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