焼け木杭に火はつくか?
確かに、石橋を壊れるまで叩いて、結果的に自ら進路を塞いでしまったにも関わらず、壊れた橋を見てやっぱり危ない橋だったんだと、自分にそう言い聞かせて安心してしまうような、そんな一面が自分にはある。良太郎もそれは自覚している。
大学の友人たちは、良太郎は文筆業で生計を立てていくつもりだろうとそう思っていたくらいだったのに、肝心の良太郎がそれを覚悟することが出来ず、黒のリクルートスーツに身を包み、企業説明会や就職相談会に足を運びまくり、友人たちを呆れさせていたくらいだった。
慎重すぎる性格が、万が一の事態を想定して、その時のための逃げ道を求め欲した結果の行動だった。
そんな就職活動真っ只中に初の連載が決まり、良太郎はようやく小説家として生計を立てていくことを真剣に考えた。
友人たちと集まっての飲み会の席で、自分は小説を書いて食っていきたいと思うと、真面目腐くさった顔で告げた良太郎を、同席していた友人たちは笑い飛ばした。


-今更だろ。
-バカだな、お前。


考え抜いて、ようやく至った結論を一笑する友人たちに、良太郎は頬を膨らませ、ただ憤慨するしかなかった。

そうして、ワンルームという間取りの小さな部屋での、良太郎の生活は始まった。
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