焼け木杭に火はつくか？
「あんた、誰からそのことを聞いたの？」

教えなさいと、夏海は英吾を睨みつけた。

長谷とのことがきっかけで、自分がパン嫌いになったことを知っている人間は、この世に自分しかいないはずなのだ。長谷だって、まさか自分が原因で自分がパン嫌いになったことなど知らないはずだ。
墓まで待っていく覚悟で胸のうちに秘めていたことを、一体誰が嗅ぎつけたのか。
夏海は、なんがなんでも英吾からそれを聞き出すつもりだった。
夏海のそんな思いなど微塵も気付いていない英吾は、一体夏海は何をそんなにいきり立っているのだろうかと、不思議そうな面もちで夏海を見つめるしかなかった。

「ベーグル屋さんが、夏海さんの元カレだって答えを一緒に出してくれたのは、サトルさんだよ。ね？」

聡に同意を求めるように目を向けた英吾に、そうじゃないと良太郎は苦笑を浮かべた。

「英吾。あのな、知りたいのはそこじゃない。元カレのせいで夏海さんはパンを嫌いになったってことをな、英吾に教えたのは誰かってことを、知りたいんだ、俺たちは」

良太郎の解説に英吾は目をぱちくりと瞬かせ、考え出した。
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