焼け木杭に火はつくか?
「んーと。それは、……秋ちゃん」

ようやく、質問の意味を理解したらしい英吾から投げ返されてきたその答えに、一瞬、全ての動きが止まったような静寂が店内に流れる。
そして、聡は勝ち誇ったような顔で、良太郎は呆れかえったような顔で、夏海を見た。
夏海は2人のそんな視線に珍しくたじろぎながら、額に手を当てて、そんなバカなと呻いた。

「ほれ。やっぱり、秋穂ちゃんじゃん」
「どうして、あの子が知ってるのよ。あり得ないって」
「夏海さん。酔った勢いでうっかり喋ったんじゃないの?」
「絶対、ない。断じて、ない!」
「ホントに夏海さんは喋ってないの? 間違いなく?」
「長谷のはの字だって秋穂に聞かせたことないわよ」
「英吾。おメー、何か聞いてねーか? 秋穂ちゃんが誰から長谷さんと夏海さんのこと聞いたか」

英吾はやいのやいのと言い合う3人に首を傾げていたが、聡からの問いかけに、これでもかというくらい大きなため息を零した。

「オレ、お腹空いてんのに」

そう言って、怒り交じりの拗ねた声で英吾は喚き始めた。
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