焼け木杭に火はつくか?
「まあ、夏海さんとこもさ、小説を載せるなんて初めてだから、まだ手探り状態になんですよ。相談には随分とのってもらってるんですけどね。なんか、まとまらなくて。夏なら夏らしさがある話にしようとは思ってるんだけど」

良太郎の説明を聞いていた聡は、しばし何かを考え込んだ。

「小説載せるやつは、何の特集組むんだ?」

唐突な質問に首を傾げながら、良太郎は英吾から聞いた話しを思い返した。

「たしか、パン屋って言ってたかな」
「そういうのも、なんかヒントにならねえのか?」
「ヒント?」
「パン屋の特集になるなら、パン屋が舞台の話にするとかさ」
「そうか。そういう発想もありか」

なるほどねえと、感心したように頷きながら、良太郎は何かに気付いてカウンターの向こうの聡を見た。
甘えるなよと言いながら、悩む良太郎の話し相手になって、少しでも何かきっかけを作ろうとしてくれている。
今度は聡のその人の良さに、良太郎の頬が緩む。
聡が淹れたコーヒーを飲みながら、良太郎は『パン職人の恋?』と書き込んだノートをぼんやりと眺め、思案した。
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