焼け木杭に火はつくか?
「いや、……一番若いのは一度来たことあるけど、大分前だな。この店を始めたころかもしれね」

眉間に皺を寄せ考え込んだ聡は、記憶の中から恩納のことを引っ張り出したようだった。

「ホント、よく覚えてるよね。この間の人だって、一年ぶりくらいにきたお客さんだったんでしょ」

良太郎は十日ほど前の出来事を思い出し、改めて、しみじみと感心したような声をあげた。
その日、一人でやってきた女性客があった。
カウンター席に座ったその客は、嬉々とした声でケーキセットを注文した。
その客に「前にもお越しいただいてますよね。ブログにウチの店のこと、書いてくださった方でしょ?」と聡は言い、客を驚かせた。
確かに、その客は一年ほど前に店に来て、注文したランチの写真を添えて、ブログに店のことを書いたという。

『あのときは、もうお腹一杯でケーキセットを頼めなかったから、また行くことがあったら、今度は絶対にケーキセットを注文すると決めていだんです』

そう続いた女性の言葉に、聡も嬉しそうに笑った。
たまたま居合わせた良太郎は、驚いた顔で二人の会話を聞いていた。しかし、感心する良太郎をよそに、聡は飄々としていた。
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