焼け木杭に火はつくか?
「法事に、あんなに香水でつけて行くんだ。すごかったよね?」

鼻がおかしくなりそうだったよ。
また鼻をムズムズさせながら、三人揃って黒い服を着ていたことで、法事帰りと決め込んでいるような良太郎の言葉に、聡は眉尻を下げた顔で考え込んでいた。

「ちらっと見えたけど、爪も派手だったよね?」
「あー。水色だったな。それに白だ黄色だので水玉の模様入ってた」
「そんな派手だったんだ」

聡の言葉に良太郎は目を丸くした。

「まあ、真っ赤じゃないだけマシかな。でも、葬式に出る手じゃないねえ。落とすの惜しくてそのままにしちゃったのかな。でも、そんな爪した手で、お焼香してきたっつーのも、なんだかなあ」

嫌そうに顔を歪める良太郎に、聡は苦笑しつつ、披露宴じゃねえかなあと呟いた。

「へ?」
「さっきのお客さんたち。ありゃ、法事っていうより結婚式じゃねえかなあ」

予想にもしていなかった聡の言葉に、良太郎は目をぱちくりとさせた。

「黒の礼服だからって法事とは限らねえべ。爪も派手だったし、ピアスだのネックレスだのも派手だったぜ」
「そうか、親戚の披露宴って可能性もあるのか」

目から鱗の発想に、良太郎は感心したように小さな頷きを繰り返した。
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