焼け木杭に火はつくか?
「すげえなあ。サトルくん。同じもの見てたのに、俺なんて法事しか思いつかなかったよ」
「まあ、黒い服っていうと法事っぽい気がするよな。なんかさ、さっさと嫁に行けみたいな説教してるのも聞こえたからさ」
俺もそれ聞いてたはずなんだけどなあと良太郎は首を傾げて、なんで気付かなかったなあとぼやいた。
一見、ぼんやりとしているような印象を与える聡は、その印象とは裏腹に物事をよく見聞きしている。
子どものころから、良太郎が見落としていること、聞き逃していることを、ちゃんと拾い上げて教えてくれたのは聡だったことを、良太郎は思い出した。


サトルくんの目で世界を見ると。
どんなふうに見えるのかなあ。


サトルくんになってみたら、いろんな発見があって楽しそうだなあと、そんな愚にもならないことを良太郎は考えた。

「そっか。披露宴か。なら、爪が派手でもって当たり前か」

納得したような良太郎の言葉に、あれくれえはそんな派手でもねえけどなと、聡はしたり顔で告げた。
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