焼け木杭に火はつくか?
近所の人や良太郎の同窓生から「すごいわね」「読みましたよ」とそう言葉をかけられても何のことか判らずに、曖昧に頷きながら首を傾げるしかなかった道代は、人伝にようやくその事実を知らされて、電話口で開口一番「何で言わないのっ」と良太郎を叱った。
-母さんだけ何も知らないなんて、酷いでしょっ
-母さんの寿命、三年くらいは縮んだからねっ
雷鳴に例えられる、耳の奥まで響く声を張り上げて、照れ隠し交じりの怒りをぶつける母親に、良太郎はただ謝るしかなかった。
それから五年が過ぎて、良太郎の作家としての生活も六年目を迎えた。
執筆依頼も、それなりに途切れることなく続き、最近ではデビューを飾った出版社以外からも仕事を貰えるようになってきた。
初対面の人に名を告げれば、著作名を挙げてくれる者も増えてきた。
名の知れた大きな文学賞にノミネートされるような作家には未だなってはいなかったが、今までに十冊を超える単行本を出し、多少は版を重ねてもらえるくらいには売れてくれた。
-母さんだけ何も知らないなんて、酷いでしょっ
-母さんの寿命、三年くらいは縮んだからねっ
雷鳴に例えられる、耳の奥まで響く声を張り上げて、照れ隠し交じりの怒りをぶつける母親に、良太郎はただ謝るしかなかった。
それから五年が過ぎて、良太郎の作家としての生活も六年目を迎えた。
執筆依頼も、それなりに途切れることなく続き、最近ではデビューを飾った出版社以外からも仕事を貰えるようになってきた。
初対面の人に名を告げれば、著作名を挙げてくれる者も増えてきた。
名の知れた大きな文学賞にノミネートされるような作家には未だなってはいなかったが、今までに十冊を超える単行本を出し、多少は版を重ねてもらえるくらいには売れてくれた。