焼け木杭に火はつくか?
「いたっ 良ちゃんっ 今から行くって電話で言ったでしょっ なんで家にいないのさっ」

乱れた呼吸もなんのそのと言うように、店に飛び込むなり、ぎゃんぎゃんと吠えるようにして喚き始めた英吾に、良太郎よりも先にやや眉尻をつり上げた聡が口を開く。

「うるせっ。騒ぐなら出てけ。お客様のご迷惑だろ」

英吾の喧しい声に、まだ店内にいた数名の客が興味深そうに英吾と良太郎を見ていた。
その視線に気付いた英吾はテーブル席のほうに向かい「すいません。ごめんなさい。お騒がせしました。も少しお騒がせします。気にしないでください」と言いながら頭を下げ、良太郎の隣に座った。

「英吾。お前には、静かにするっていう選択肢はないのか?」
「ないね」

良太郎のもっともらしい常識的な言葉すら、英吾は即座にばっさりと切り捨てて、良太郎ににじり寄った。

「それどころじゃないよ、良ちゃん」

英吾は良太郎の肩に手を置いて、良太郎をわさわさと揺さぶりだした。
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