焼け木杭に火はつくか?
「原稿は? ねえ、ねえってばっ」
「煩い。今、サトルくんパワー注入されて、閃きかけてんだよ、ジャマすんなって」

邪険に英吾を振り払う良太郎に、英吾はそれでも食らいついた。

「ホント? ホントにホント? 閃いてる? きてる?」
「煩いって。せっかくのサトルくんパワーが、お前に吸い取られて無くなりそうだよ」
「なんだよ、もう、人が心配してんのにっ ……サトルさんっ、それ煩いってばっ」

カウンター席に座り、いつものように騒ぎ始めた2人にため息を付きつつ、製氷皿から出した氷をミキサーで粉砕し始めた聡に、英吾は煩いから止めてーっと訴える。

「ここはサトルくんの店だ」

すかさず良太郎は英吾の後頭部を叩く。

「これはおメーのだ」

聡はここに座れと良太郎の席から1番離れたカウンター席を指差し、英吾を良太郎から引き離す。

「ごめんなさいっ 勢いが余りまくって調子出したっ つーか。俺、何か注文した? 注文したの?! ええっ?! 記憶にねーっ」

膨れながらも頭を抱えて喚く英吾に、良太郎と聡は一瞬目を合わせて苦笑して、それぞれの作業に戻る。
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