焼け木杭に火はつくか?
聡は粉砕した氷を背の高いグラスに一杯に入れると、ソーダ水を注ぎいれて英吾の前に置いた。

「サトルさん。この緑の、なに?」

氷に混じる緑色に英吾は眉間に皺を寄せながら、ストローの先でそれをつついたり、匂いをかいだりした。

「あ。いい匂いがする、これ。レモン? なんか、さっぱりしておいしいよ」
「レモンバームっていうレモンの香りがするハーブだよ。それ入れて作った氷を、細かく砕いたんだよ」
「へえ。すごいね」
「あと、レモンバームで作ったシロップも入っているからな。香り、いいだろ?」
「うん。すごい好き、この匂い」
「気分落ち着くから、お前にピッタリだろ。香り嗅いで静かにしとけ」
「ん? うん?」

聡の言葉に、英吾は判ったような判らないようなそんな顔で頷きながら、声を潜める努力をして良太郎を指差した。

「ね。ホントに大丈夫そ?」

心配そうに尋ねる英吾に、聡は肩をすくめて見せた。
「大丈夫じゃね? 良太郎はガキのころから、尻に火がつくと、とんでもねーバカ力出して、ブルドーザー並みに壁ぶち壊していくから」
「あー。確かに。良ちゃん、追い込まれると強いもんね」

聡のその言葉には納得したように頷き、なんだ、そんな心配しなくてよかったのかと、ようやく安心したように笑った。
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