桜 音
昔話
依の話してくれた物語は、こんなものだった。
──────……
時は平安時代。
ある力を持つ貴族の家に、一人の娘がいた。
そこの家の者たちは、なぜかその娘を檻の中に閉じ込めていた。食事さえも、檻の中で一人で食べさせていた。
お世話係の者達は皆、閉じ込められている理由を彼女に教えなかったが、彼女は知っていた。なぜ自分がこんなことをされているのかを。
それは、彼女の母親が、彼女を産んだと同時に亡くなってしまったから。
彼女の母親は誰からも愛される女性で、皆から慕われていた。
その人を殺した、その人にそっくりな美しい娘。
彼女はいつも自分を責めていた。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
私が生まれてきたから。
お母様は――
ごめんなさい。
ごめんなさい……。
一生自分は、誰にも愛されず死んでゆくのだと思っていた。
けれど、そんな彼女を救った不思議な男の子がいた。