紺碧の海 金色の砂漠
(わたしも……脱いだほうがいいかな?)


舞もワンピースに手を掛けるが、


「余計なことを致すな。お前を脱がせるのは私の役目……楽しみを奪うでない」


ミシュアル国王はそんな言葉と共に、ワンピースの背中についたファスナーを引き下ろした。肌触りの良いコットンは足元に滑り落ち、舞は明るい陽射しの中、ショーツ一枚になる。彼はそのショーツにも手を掛け、引き摺り下ろした。

ふたりは一糸纏わぬ姿で、ベッドの上に横たわった。


「ね……アル。わたし、覚悟はできてるから……」

「なんの覚悟だ?」

「もし、わたしが男の子を産めなかったらってこと。でも、不意打ちはやめてね。それから、もし心変わりしたときは、わたしのこと日本に帰らせて。それだけ……約束してくれる?」


舞にすれば思いっきり譲歩したつもりだった。

レイとティナがどうやって乗り越えていくのかはわからない。でもお国柄で考えれば、舞に男の子ができなかったときのほうが、あのふたりより大問題になると思う。

しかし……。


「そんな約束はできぬ」

「アル……」

「“妻は生涯ひとり”だと、何度言わせれば気が済む。アッラーに誓ったであろう、私の妻はお前ひとりなのだ。お前以外の女に、私の息子を産む権利など与えぬ。お前が日本に帰る日など永久に来ぬ。舞、諦めて心ゆくまで妻の悦びを味わうがいい」


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