紺碧の海 金色の砂漠
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『ターヒルと連絡が取れぬとはどういうことだ! もういい! 戻り次第、連絡を寄越せと伝えよ!』


呑気にリゾートに籠もり、ハネムーンを楽しんでいるように見えるミシュアル国王だが、定時連絡はちゃんと受けていた。

今回、本国にターヒルを、日本にはヤイーシュを残しアズウォルドにやって来たのだ。

ターヒルを残したのは彼が結婚を控えていたことが第一の理由である。他にも理由はあり、ミシュアル国王の不在中、ラシード王子と共に王族の管理と首都の治安維持を任せて来たという。

ラシード王子だけではどうも心許ないらしい。彼をフォローするためなら、ターヒルは前国王の名を使ってもよいことになっていた。前国王は退位間もないこともあり、まだまだ権力・影響力とも衰えてはいない。そんな前国王の名前を出せば、国王の一側近であるターヒルにも相当の力が揮えるという。


「電話で怒鳴ってたのはヤイーシュなの?」


だいぶアラビア語の聞き取りができるようになった舞は、ミシュアル国王に尋ねる。


「いや、アズウォルド本島にあるクアルン大使館員だ。ヤイーシュから定時連絡が入っておらぬ。それをターヒルに確認しようとしたら、奴とも連絡が取れぬのだ」


かなりイライラした様子で部屋の中を行ったり来たりしている。


「あ、ほら、ターヒルは新婚さんだしさ。ヤイーシュもモテそうだから、日本人の恋人を見つけてデートしてるのかも」

「馬鹿者! そんな理由で連絡を怠ったのであれば、ふたりともクビだ!」


ミシュアル国王の気持ちを和まそうと言ったのだが、余計に怒らせたらしい。とは言え、舞にしても訳がわからない。第一、連絡がないのは舞のせいではないのだ。


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