紺碧の海 金色の砂漠
彼がミシュアルに反感を持つとすれば、一点だけ心当たりがある。

リドワーンは七年前に第一夫人を、三年前に第ニ夫人を娶ったが子供に恵まれていない。彼はふたりの妻を離縁し、今年中に第三夫人を迎えるという。

その噂を聞いたとき、ミシュアルは彼を呼び出した。


――子供を得る為の結婚なら、お前に夫の義務を果たす能力があることを証明せよ。できぬときは、これ以上不幸な女を増やすわけにはいかない。


リドワーンはその証明を断り、離婚と第三夫人の件を撤回した。ミシュアルもそれ以上、年上の甥に恥を掻かせることはしなかったのである。



『レイ、面倒を掛けるが、すぐさま専用機が飛び立てるよう、準備してくれ』

『ミシュアル陛下、それは』


レイより先にヤイーシュが反応した。


『お前はアズウォルドに残れ』

『いえ、陛下が帰国されるのであれば、私も』

『怪我人では役に立たん!』

『いいえ! 骨が砕けても、私は陛下に付いて参ります!』


ヤイーシュは胸を押さえつつ、怒りに満ちた瞳に青い炎を燃え立たせていた。


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