紺碧の海 金色の砂漠
「これは一時帰国に過ぎない。二~三日、或いはもっと早く、案件が片付きしだい戻ってくる。我々の帰国スケジュールに合わせて、首都でパレードも行われる予定だ。それより前に揃って引き上げるのは、国を挙げて迎えてくれたアズウォルドに対して礼を失する。残るのは正妃の務めだ」
 

そんなふうに言われては、舞も承知するよりない。

不満ありげな舞の様子を察したのだろう。ミシュアル国王の声が心持ち甘くなる。


「どうした、舞? そんなに私と離れるのが寂しいのか?」

「べ、べつに、寂しいとかじゃ……その、退屈って言うか……だって、ティナもレイ陛下と仲良くしてるみたいだし。ひとりでバカンスって“ひとり焼肉”とか“ひとりボーリング”と同じくらい悲しい気がして」

「その“ひとり焼肉”が何を意味するのはわからぬが……舞、私の心は常にお前と共にある。必ず戻る。それまで、おとなしく待つように――」
 

ミシュアル国王の言葉は信じられないほど優しかった。

普段なら強がりを言う舞も、最低でも二日は会えないのだ、と思い、つい……


「ねぇアル、私のこと愛してる?」


言ってすぐ――我ながらなんていう恥ずかしいセリフを、と後悔したがもう遅い。

電話口から爆笑、いや『くだらん!』なんて声が届くことを想像したが、今夜は違った。


「愛している。我が命と名誉、すべてを懸けて愛し抜く。不服か」

「い、いえ、充分です」


琥珀色の瞳を想像しつつ、舞は赤面する。

 
(まぁ二日くらいなら、せっかく憧れの南の島にいるんだし、羽を伸ばそうかな。ちょっとだけ、独身気分で遊んじゃおう!)


たった二日、そう信じていた――。


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