紺碧の海 金色の砂漠

(7)献身

(7)献身



「ねぇ、シャムス。まだ怒ってる?」
 
衝撃の再会から一夜明け……朝食を食べた後、舞はシャムスを伴い、リゾート・スパの中を散歩に出掛けた。

緑の芝生の上を歩きながら、海風に髪をなびかせ、舞はせっせとシャムスのご機嫌を取る。王妃なのだから女官が不愉快そうな顔をしていたら叱ってもいいのかも知れない。

でも、舞はそんな気にはなれなかった。


「エステもあるんだよ。ボディ・トリートメントとか。シャムスだって新婚さんなんだからさ、ぴっかぴかにして、ターヒルに会った時、ビックリさせてやろうよ!」
 

クアルンにも海はあるが、首都から気楽に行ける距離ではない。

リゾート施設やビーチは、当たり前のように男性用と家族用は別! 女性だけで海水浴を楽しむなんて論外だ。

それに、妻や娘の水着姿を人前に晒したくない、という男性も多い。ターヒルもそのタイプに間違いない。コレを逃せば、シャムスが海で遊ぶなんてできないだろう。

がそう思ってウキウキとシャムスに話し掛けるが……。


「夕べのことは、まさかヤイーシュが一緒だとは思わなかったんだって」


確かにアバヤを着てくれとは言われた。

でも、ヤイーシュが一緒ならそう言ってくれたらよかったのだ。

ところが……


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