紺碧の海 金色の砂漠
「あの……アーイシャ様、お怒りですか?」

「そういうわけじゃないけど……」

「愛が深い証ではありませんか。アーイシャ様はお幸せでございますよ」


言葉とはうらはらに、シャムスの瞳に影が見える。


「どうしたの? ターヒルと喧嘩でもした?」

「まあ、そんな。旦那さまと喧嘩なんて」

「ホントは、国を離れたくなかったんじゃない? ターヒルと一緒にいたいんでしょう? アルに連絡取ってみるから、帰してもらえるように頼もうか?」

 
 舞の言葉にシャムスは小さく首を振る。


「でも……」


どう見てもシャムスの元気のなさはおかしい。


「いいえ! 陛下がお戻りになられたら、問題はすぐに片付くでしょう。そうしたら、陛下と一緒に旦那さまが迎えにきてくださいますわ。本当に時差で体調が戻らないだけなのです。明日には……アーイシャ様のおっしゃいますように、エステを受けてみてもよろしいですか? 旦那さまに喜んでいただけたら……」


ポッとシャムスの頬が赤くなった。


「うん、間違いなく! ねぇねぇ、ターヒルってあんな顔してエッチなこと口にする?」


シャムスの顔は湯気が立つほど赤く染まっていき……


「ア、ア、アーイシャさまっ」

 
舞は心に隅に芽生えた不安を、大きな笑い声で追い払った。


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