紺碧の海 金色の砂漠
~*~*~*~*~


(十三分……その気になれば早くできるものだな)


舞を寝室のベッドまで運び、着衣を整えただけで護衛官と側近が迎えに来た。そのため、舞には声をかける時間もなかった。


(夫の前で嬉しそうに他の男を見るからだ!)


急き立てて体を開かせ、とりあえず彼自身は満足したものの……。立ったまま背後から、など初めてのことだった。舞は声もなくグッタリしていた。たった一度の強引な行為で舞が夫婦の営みを拒絶するようにでもなれば、彼にすれば大打撃だ。


(やっぱり抑えるべきだったか……いや、しかし……)


ミシュアルの隣でコホンと小さな咳払いが聞こえた。


彼はハッとして顔を上げる。

すると、特別会議場に集められた“アズウォルド海底油田事業”に関わる約三十名の人間が、ジッと彼を見つめていた。その中には、この国に大使館を置く石油輸出国機構《オペック》の加盟国大使もいる。


アズウォルドはオペックの加盟候補国だ。アズウォルド側はそれを望んでいたが、加盟国の中には新規の加盟を認めたがらない国も少なくない。

彼らは皆、アズウォルドに脅威を抱き、主導権を握られることを恐れていた。

そしてクアルンは、石油の埋蔵量・採掘量ともに世界一だった。当然、オペックの加盟国においてリーダー的地位にある。

レイが旧知の仲であるミシュアルを自国に招いた理由のひとつはそれだ。


トレイドウィンドのビジネスタウンにある国際コンベンションセンター。彼らは今、そこの会議場にいた。


(しまった……私としたことが)


彼は横柄な態度を崩さぬまま、レイと同じように咳払いをする。

そして、もう一度説明を求めたのだった。


< 15 / 243 >

この作品をシェア

pagetop