紺碧の海 金色の砂漠
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(ヴィラってどれも同じような間取りっていうか、配置なのね)


似た造りの階段を一段一段、そーっと上がりながら、舞はそんなことを考えていた。

ちなみにダーウードはヴィラではなく、リゾート・スパの本館に部屋を取っているという。

昨日チラッと挨拶に顔を見せただけで、そそくさと引き上げて行った。その態度は、正妃に対するものからは程遠い。誰が見ても側室扱いだ。


「いくら先代の国王陛下に長年お仕えしたとはいえ、現国王の正妃様になんという失礼な態度でしょう。陛下がお戻りになられたら、私から申し上げます!」


だいぶ元気が出てきたシャムスは、鼻息も荒く怒っていた。

とはいえ、ミシュアル国王自身がどうもダーウードが苦手と見える。

それに、国王の前ではあくまで儀礼的とはいえ、頭は下げている。間違っても公然と舞を無視しているわけではないのだ。ただ、舞だけ……あるいは女だけになると態度が変わるという。

ある意味、彼は教典(コーラン)を遵守しているのだろう。


そのダーウードに、こんな風に男性がひとりでいるヴィラに忍び込むところを見られでもしたら……。


(コレってひょっとして……夜這いに見えたりする?)


思えば、ヤイーシュからプロポーズされたこともあった。

あれはたぶん本気じゃない、とは思うが……。もし、本気だったら? ふいに浮かんだ疑問に、舞の足はピタリと止まる。


(この状況って、呼びつけるよりバレたらやばいかもっ)


舞は額に汗が浮かび、回れ右をした。


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