紺碧の海 金色の砂漠
(9)そして熱いキスを
(9)そして熱いキスを
「レイ! レイ? どうしたの?」
ふと気づけば王宮の中庭に佇み、レイは噴水を見つめていた。
彼の名を呼び、駆け寄ってきたのは最愛の妻ティナである。だが、噴水を睨みつけるようなレイを見て不安を覚えたらしい。彼女の足は止まった。
ミシュアルが本島の海上エアポートを飛び立って二日目の朝になる。
無事クアルン入国の一報をミシュアルから受け取り、早二十四時間が経過。予定どおりなら、今日中にもクアルン出国の連絡があるはずだが……。
レイは早朝から外務省経由で予期せぬ報告を受け、戸惑っていた。
それをヤイーシュに伝えるべきかどうか。
ひょっとすれば、ダーウードが自国の大使館を通じ、すでに情報を入手している可能性はある。そのときは舞とシャムスに伝えるか否か、相談できるのだが。
「……レイ? シーク・ミシュアルの身に何か……」
ティナはやけに心配そうだ。
おそらくミシュアル本人より、すっかり仲良くなった舞を案じてのことだろう。
レイはティナの手が自分の腕に触れた瞬間、彼女に飛びつくように抱きしめた。
「レ、レイ!? いったい……」
「何もないよ。解決したという連絡がない、それだけだ。彼の身に何かが起こったわけではない。ただ……友人が危険に陥っても、表立って動くことのできない自分が情けなくてね。自国の利益を最優先に考えてしまう。こんな私は、冷たい人間なのかもしれない」
「レイ! レイ? どうしたの?」
ふと気づけば王宮の中庭に佇み、レイは噴水を見つめていた。
彼の名を呼び、駆け寄ってきたのは最愛の妻ティナである。だが、噴水を睨みつけるようなレイを見て不安を覚えたらしい。彼女の足は止まった。
ミシュアルが本島の海上エアポートを飛び立って二日目の朝になる。
無事クアルン入国の一報をミシュアルから受け取り、早二十四時間が経過。予定どおりなら、今日中にもクアルン出国の連絡があるはずだが……。
レイは早朝から外務省経由で予期せぬ報告を受け、戸惑っていた。
それをヤイーシュに伝えるべきかどうか。
ひょっとすれば、ダーウードが自国の大使館を通じ、すでに情報を入手している可能性はある。そのときは舞とシャムスに伝えるか否か、相談できるのだが。
「……レイ? シーク・ミシュアルの身に何か……」
ティナはやけに心配そうだ。
おそらくミシュアル本人より、すっかり仲良くなった舞を案じてのことだろう。
レイはティナの手が自分の腕に触れた瞬間、彼女に飛びつくように抱きしめた。
「レ、レイ!? いったい……」
「何もないよ。解決したという連絡がない、それだけだ。彼の身に何かが起こったわけではない。ただ……友人が危険に陥っても、表立って動くことのできない自分が情けなくてね。自国の利益を最優先に考えてしまう。こんな私は、冷たい人間なのかもしれない」