紺碧の海 金色の砂漠
レイはティナに触れたことで思わず本音を吐露してしまった。

クアルン王国では今、よからぬ企てが進行しているのは事実なようだ。 


『如何なる問題が起ころうと、国を逃げ出すような王に王たる資格はない』


ミシュアルの言葉には同意せざるを得ない。

レイ自身、同じ立場に立たされたら、ティナの安全を確保したうえで単身帰国するだろう。

だが、側近であるヤイーシュをこの国に留め置いたのは正しかったのだろうか? 

他人の身分証を使い、米国籍と偽名を名乗ったことを理由に出国を許可しなかった。無論、怪我に配慮したミシュアルの希望ではあったが……。
 

レイの腕の中から少し身体を起こし、ティナは彼の髪に触れた。クセのないサラサラの髪をかき上げながら、


「いやだわ、レイ。本当に冷たい人はそんな心配などしないものよ」

「だが、ティナ……」


異論を唱えようとした唇にそっと彼女の細い指先が当てられる。


「何もかも、背負ってしまおうとするのは、あなたの悪い癖だわ。シーク・ミシュアルはご自分の義務と責任をわかっていらっしゃるし、あなたに手を貸して欲しいところはちゃんと言葉にされてるんでしょう? あなたは充分なことをしているわ」


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