紺碧の海 金色の砂漠
~*~*~*~*~


夜は明けている。今日もいい天気みたいだ。

わかっていても、舞は起き上がれない。


(ヤイーシュめ……本当に手強いんだから) 


風通しのよい軽い掛け布団を頭までかぶり、舞は昨夜のことを思い出していた。



舞を彼女のヴィラまで送り届け、中庭に建てられた洋風東屋(ガゼボ)の中のベンチに座らせると、ヤイーシュは距離を取って控えた。

彼は身を屈めているので、ヴィラから人が出て来ても、おそらく舞ひとりに見えるだろう。


悔しいが、これが舞の名誉を案じた配慮なのだと思うと、逆らえない。


「えーっと、どうしても聞きたいことがあって」

「月瀬家の皆様のことでしたら、全員ご無事です、と申し上げたはずですが」


確かにそんな事務的な報告は聞いた。だが、


「ちょっと待ってよ! 何か起きたけど無事なのか。それとも、何も起きてなくて無事なのか。全然違うでしょ? それに、わたしのことが理由で家族以外の人に迷惑かけたのだとしたら……」


舞はそのことを心配していた。


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