紺碧の海 金色の砂漠

(10)憎いけど好き

(10)憎いけど好き



フテ寝を決め込もうとしていた舞を、ベッドから引っ張りだしたのはレイ国王とティナであった。

クロエがベッド脇にきて、


「国王陛下ご夫妻がビーチでお待ちになっておられますが……。アーイシャ妃殿下のお加減が悪いようです、と申し上げたほうがよろしいでしょうか?」


心配そうに声を掛ける。

 
(そ、そんな恐れ多い! 仮病で両陛下を追い返すなんて、バチが当たるって) 


舞は飛び起きて身支度を整えた。

だが、どうしてビーチなのだろう。普通はリゾートの入り口から入ってくるもんじゃないだろうか? 

そして、舞の疑問は彼女がアバヤ着用でビーチに下りるなり、解消されたのだった。


~*~*~*~*~
 

「ティナ! ねぇティナ、あれってひょっとしてイルカ?」

「ええ、そうみたいね。マイ、イルカは初めて?」

「もちろん! ひょっとして、イルカと一緒に泳げたりする?」


舞は今、空から紺碧の海を見下ろしていた。

水面とごく近い深さを、滑るようにイルカの群れが泳いでいる。一、二頭が跳ねると数頭が後につづくのだ。そのたびに、舞は歓声を上げた。


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