紺碧の海 金色の砂漠
彼女が乗っているのは王国のカラー、アズルブルーに彩られた飛行艇。三十人乗りのサイズにたった十席。余裕のVIP仕様だ。

操縦士はひとりでも国の規定には反していない。だが、安全のために副操縦士も配置され、乗客担当の女性乗務員までいる。

さすが国立リゾート・スパご自慢の観光用飛行艇! と舞は感激していた。


飛行艇の窓に張りつき、イルカの群れをみつめる舞に答えてくれたのはレイ国王だった。


「このあたりは日本に比べると、本当にサメが多くてね。ビーチ以外は全面遊泳禁止にしているんだ。期待させて申し訳ないが」

「い、いえ、すみません。そんな外海で泳げるほど泳ぎに自信はないんで……ちょっと言ってみたかっただけなんです。本当にすみません」


済まなそうに言われると、逆に舞のほうが恐縮する。

これがミシュアル国王なら――


『馬鹿者! サメのいる海で泳ぐつもりか!?』と一喝されて終わるだろう。


舞もムカついて、


『シークだったらサメくらいどうにかしてよ!』


なんて無茶なことも言えるのだが、相手が上品なレイ国王ではそうもいかない。

レイ国王はそんな舞の緊張をほぐそうと親しげに声を掛けてくれた。 


「飛行艇に乗ったのは初めてかい? いつでも使えるように待機させていたはずなんだが」


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