紺碧の海 金色の砂漠
――ターヒルの逮捕。
それは今朝、レイが外務省経由で受けた報告だった。
『だが、ターヒルに万一のことがあれば』
『たとえそうでも、彼女にできることは神に祈るだけです。それは今、聞かされたとしても同じこと』
厳しいようだが事実だろう。
レイが無言でいるとヤイーシュが続ける。
『ご心配には及びません。ミシュアル様が帰国されたのです。必ずや事態を収拾してくださいます。ターヒルは陛下とともに妻を迎えに来るでしょう。私はそう信じております』
バストバンドを装着して胸部を固定し、痛み止めの注射を打ってはいるが、医師からは昨夜も三十八度の発熱があったと報告を受けている。
『ミスター・キャラハン、君自身はどうだ? この警戒態勢を見て、充分に納得してもらえたと思うが。君も無茶をせず、ヴィラで静養にあたるべきだと私は思っている』
『お言葉、ありがたく。――私は以前、ミシュアル様に失礼な振る舞いをいたしました。それにも関わらず、今回、正妃様の警護を任せていただけて光栄に思っております。身命を賭して、アーイシャ様をお守りする所存です』
『だが、君に何かあればシャムスのように泣く者もいるだろう』
レイは何気なく尋ねたつもりだった。
しかし、予想以上にヤイーシュは狼狽し、
『そっ、そのような者は……私に妻はおりませんし、第一、妻はアズウォルド人と決めておりますので。日本にそのような……』
逆にレイのほうがどう答えてよいのかわからない。
『さあ、そろそろセルリアン島に戻ろうか。ミシュアルから、ターヒルを連れてクアルンを出発した、と連絡が入っているかもしれない』
レイはヤイーシュを促し、デッキに向かうのだった。
それは今朝、レイが外務省経由で受けた報告だった。
『だが、ターヒルに万一のことがあれば』
『たとえそうでも、彼女にできることは神に祈るだけです。それは今、聞かされたとしても同じこと』
厳しいようだが事実だろう。
レイが無言でいるとヤイーシュが続ける。
『ご心配には及びません。ミシュアル様が帰国されたのです。必ずや事態を収拾してくださいます。ターヒルは陛下とともに妻を迎えに来るでしょう。私はそう信じております』
バストバンドを装着して胸部を固定し、痛み止めの注射を打ってはいるが、医師からは昨夜も三十八度の発熱があったと報告を受けている。
『ミスター・キャラハン、君自身はどうだ? この警戒態勢を見て、充分に納得してもらえたと思うが。君も無茶をせず、ヴィラで静養にあたるべきだと私は思っている』
『お言葉、ありがたく。――私は以前、ミシュアル様に失礼な振る舞いをいたしました。それにも関わらず、今回、正妃様の警護を任せていただけて光栄に思っております。身命を賭して、アーイシャ様をお守りする所存です』
『だが、君に何かあればシャムスのように泣く者もいるだろう』
レイは何気なく尋ねたつもりだった。
しかし、予想以上にヤイーシュは狼狽し、
『そっ、そのような者は……私に妻はおりませんし、第一、妻はアズウォルド人と決めておりますので。日本にそのような……』
逆にレイのほうがどう答えてよいのかわからない。
『さあ、そろそろセルリアン島に戻ろうか。ミシュアルから、ターヒルを連れてクアルンを出発した、と連絡が入っているかもしれない』
レイはヤイーシュを促し、デッキに向かうのだった。