紺碧の海 金色の砂漠

(4)失われた真実

(4)失われた真実



アズウォルド王妃クリスティーナは、十六歳のとき、独りの男に拉致監禁されたのである。

レイプはされなかったものの、全裸の写真を撮られ……最悪なことにそれがインターネットで世界中に広まってしまった。

当然だが彼女に罪はない。

だがクアルンの基準で言えば、彼女の純潔は疑われ花嫁となる資格はない、と判断されるだろう。


その女性をわざわざ妃にしたレイの心理は、ミシュアルには理解し難いものであった。


『我が国ではありえぬことだな。王も王妃も厨房には立たん』


舞は何やらごちゃごちゃしているようだが、気付かぬ振りをするのが精一杯だ。年寄りに見つかると『王妃たるものが』と言い出すに決まっていた。


「それはともかく、シーク・ミシュアル。ムスリムの戒律でティナをよく思っていないことは知っているが、彼女は我が国の王妃だ。相応の敬意を払ってくれ。エアポートのときのように、無視することは私が認めない」


不意に英語に戻すと、彼は厳しい口調でミシュアルに警告を発した。


空港ではクリスティーナから英語で挨拶を受けた。

だが、彼女をよく思っていないミシュアルは、そのまま言葉を返さなかった。

通訳がオロオロしていたことも知っている。舞は気付かなかったようだが、他のクアルン側の人間は当然のこととして受け止めていたようだ。


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