紺碧の海 金色の砂漠

(12)ロイヤル・ターゲット

(12)ロイヤル・ターゲット



ミシュアルはヘリを用意させる間、リドワーンの人柄を思い浮かべていた。 

彼は優秀だが腹の据わった男ではない。言われたことだけをこなし、何ごともほどほどで妥協できる人物だ。

宗教警察の幹部で軍務経験もあるが、前軍務大臣だったマッダーフとは格が違う。とても、軍を率いてミシュアルに対抗するような勢力など持ちようがない。

海外では王族の特権で、多少羽目をはずしているようだが……。

それに関しては国際法に触れない限り、ミシュアルも目こぼしするつもりでいる。締め付けが過ぎては、より凶悪な犯罪に走る王族も出てくるからだ。
 

(ヤツに関しては、手綱の加減を誤ったか?)


ミシュアルは独自のルートでルシーア地方の安全を確認した。そのうえで、王宮の真裏にあるヘリポートに急ぐ。

そんな彼の後を追いかけてきたのはラシードだった。


「アル……僕も行きたい。連れて行って欲しい」

「――それは認められない」

「砂漠で式を挙げたときは、ふたりともダリャを離れたじゃないか」

「あのときは父上が国王だった。だが、今は違う」


ミシュアルが帰国するまでラシードが首都を離れることはできない。

国王と王位継承順位一位の王子がそろって王宮からいなくなれば、何か起こるかわからないからだ。


< 171 / 243 >

この作品をシェア

pagetop