紺碧の海 金色の砂漠
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アズウォルド王国、空の玄関口に一機のプライベートジェットが着陸した。ジョン・F・ケネディー国際空港から飛んできた民間機である。

そして海上エアポートに降り立ったのはひとりの男。

彼は黒いスーツを着込み、手にアタッシュケースを持っていた。


「ようこそ、アズウォルドへ。パスポートを拝見いたします」


男は背広の胸ポケットからパスポートを取り出し、入国カウンターにいる女性職員に渡した。

それは赤い表紙で“日本国”と金字で書かれている。


「恐れ入りますが……」


女性職員はにこやかな笑顔をくずさぬまま、男に声をかけた。すべて言われずとも男は察したようだ。右手で黒いサングラスをはずす。

男は一八〇を軽く超える長身だった。体格はスッキリしていて、とくに危険なムードをかもし出しているわけではない。だが、彼が身にまとう空気は独特なものであった。


そして女性職員は男の素顔を見た瞬間、息を飲む。

そのまま十秒あまり、彼女は無言で見惚れ続け――。


「失礼。先を急ぐんだが」
 

耳ざわりの良い、艶のあるバリトンが女性職員の耳に届く。彼女は頬を赤らめ、自らの想像を恥じるようにうつむいた。

男の言葉はパスポートにふさわしく日本語で……だが、サングラスで隠した瞳の色からは想像しがたい言葉であった。
 

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