紺碧の海 金色の砂漠
~*~*~*~*~
アズウォルド王国、空の玄関口に一機のプライベートジェットが着陸した。ジョン・F・ケネディー国際空港から飛んできた民間機である。
そして海上エアポートに降り立ったのはひとりの男。
彼は黒いスーツを着込み、手にアタッシュケースを持っていた。
「ようこそ、アズウォルドへ。パスポートを拝見いたします」
男は背広の胸ポケットからパスポートを取り出し、入国カウンターにいる女性職員に渡した。
それは赤い表紙で“日本国”と金字で書かれている。
「恐れ入りますが……」
女性職員はにこやかな笑顔をくずさぬまま、男に声をかけた。すべて言われずとも男は察したようだ。右手で黒いサングラスをはずす。
男は一八〇を軽く超える長身だった。体格はスッキリしていて、とくに危険なムードをかもし出しているわけではない。だが、彼が身にまとう空気は独特なものであった。
そして女性職員は男の素顔を見た瞬間、息を飲む。
そのまま十秒あまり、彼女は無言で見惚れ続け――。
「失礼。先を急ぐんだが」
耳ざわりの良い、艶のあるバリトンが女性職員の耳に届く。彼女は頬を赤らめ、自らの想像を恥じるようにうつむいた。
男の言葉はパスポートにふさわしく日本語で……だが、サングラスで隠した瞳の色からは想像しがたい言葉であった。
アズウォルド王国、空の玄関口に一機のプライベートジェットが着陸した。ジョン・F・ケネディー国際空港から飛んできた民間機である。
そして海上エアポートに降り立ったのはひとりの男。
彼は黒いスーツを着込み、手にアタッシュケースを持っていた。
「ようこそ、アズウォルドへ。パスポートを拝見いたします」
男は背広の胸ポケットからパスポートを取り出し、入国カウンターにいる女性職員に渡した。
それは赤い表紙で“日本国”と金字で書かれている。
「恐れ入りますが……」
女性職員はにこやかな笑顔をくずさぬまま、男に声をかけた。すべて言われずとも男は察したようだ。右手で黒いサングラスをはずす。
男は一八〇を軽く超える長身だった。体格はスッキリしていて、とくに危険なムードをかもし出しているわけではない。だが、彼が身にまとう空気は独特なものであった。
そして女性職員は男の素顔を見た瞬間、息を飲む。
そのまま十秒あまり、彼女は無言で見惚れ続け――。
「失礼。先を急ぐんだが」
耳ざわりの良い、艶のあるバリトンが女性職員の耳に届く。彼女は頬を赤らめ、自らの想像を恥じるようにうつむいた。
男の言葉はパスポートにふさわしく日本語で……だが、サングラスで隠した瞳の色からは想像しがたい言葉であった。