紺碧の海 金色の砂漠
室内はまるで昼間のように明るくなる。

沖にはアズウォルドの戦艦が、浜からは兵士が階段を上がってくるのが見えた。


そして庭に待機しているのは島内の警察官だ。

彼らの先頭に立つのが、レイ国王の命令を受けた王宮警察に所属するニック・サトウ。本来は国王専属の警護官として王宮に勤めている。ミシュアル国王ほど大柄ではないが、ヤイーシュと遜色ないほどの体格をした強面(こわもて)の男だった。

そのニックが拳銃を手に一歩屋内に踏み込んだ。


「この建物だけでなく、国立リゾート・スパの周囲は警官が、そしてセルリアン島は海軍が包囲した。逃れる道はない。投降しない場合、射殺が許可されている。小さな島国だと甘く見られては困る。我が国はテロリストに対して容赦はしない」


ニックのアズウォルド英語をアラビア語に訳し、ヤイーシュは男たちに伝えた。

加えて、


『この国はテロにより国王を殺された過去がある。暴力により歴史を動かそうとする者には容赦がないぞ』

『――我らはアッラーの教えに……』

『王に背き、正妃の命を狙う不届き者に、神(アッラー)の名を口にする資格などない!』


ヤイーシュの手の中で“愛国の戦士”を名乗る男は力なくうなだれた。


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