紺碧の海 金色の砂漠
(ど、どうなってるの!? 職務怠慢だってばっ)


部屋を見回し武器になりそうなものを探すが、壊したらマズイような骨董品ばかりだ。しかも、軽くてコンパクト――繊細な陶器か宝飾品ばかり並んでいた。


(なんで甲冑とか槍とか飾ってないのよーっ。防犯用のバットくらい置いといてよっ)


槍を持ってどうする気か、と聞かれたら困るが……。

とりあえず、舞はソファを飛び越えながら、テーブルの上にあった大理石の灰皿をつかんだ。


「あなた誰っ? わたしをクアルン王国王妃、アーイシャ・モハメッド・イブ? アブ? いや、ラブ? ……サドがどうとか。とにかく! わたしに何かあったら、ミシュアル国王が黙ってないわよっ!」


今夜の舞はハネムーンにぴったりのヒラヒラネグリジェ姿である。

しかし、片手に大理石の灰皿を持ち、もう片方の手には、まだ切られてない羽根枕を持っていた。お世辞にも、強そうとは言いがたいファイティングスタイルだ。


舞の名誉のために付け加えるなら……普段は自分の名前くらいスラスラ言える。

でも寝込みを襲われたうえ、刃物を手に追い回されては、とても平静ではいられない。


闇の中、侵入者は黒ずくめの服装をしていた。

ベッドの反対側なら月光が射しているが、こちら側は目を凝らしてもほとんど見えない。だが、立ち上がった舞と視線の位置がほぼ同じ。ということは、男性なら、さほど大柄でない人物ということになる。

そして舞は、その目に見覚えがあった。


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